中学校の部の総評


■第1部      ■第2部      ■第3部


■第1部 (観察や実験の記録)

【物理】
 「光による物の色の見え方の違い」や「ゴム底の靴ですべったこと」,「電子レンジのはたらき」などの身近な日常生活のなかで不思議に感じたことに対して,実験装置を自分で工夫して作り,実験・観察を通して,現象を解き明していった優れた作品が多く見受けられました。測定をするときは,繰り返して行って平均を算出して信頼性を高めること,また,結果をグラフ等で表してわかりやすく工夫することを今後も心がけてほしいと思います。なかでも,実験・観察の結果とその考察をきちんと分けて書くことに注意する必要があります。なぜそういう結果になったのか,その理由はこう考えると説明できるのでないかという自分の考えや予想をしっかり持ち,さらに別の実験を通してそれを確認しようとすることで,次のより深い研究へと発展していくことが期待できると思います。

【化学】
 時間がかかる研究に一生懸命取り組んだと思われる力作が見られ,感心しました。また,斬新なアイディアの研究があり,大変評価できます。しかし,実験書通りに実験・観察等を行い,それで終わってしまっている作品がいくつも見られたのは残念です。先に結論があって,それを示すための実験を行い,その結果を予想通り解釈するといった研究も見られました。先入観にとらわれず,結果を客観的に考察することが大切です。予想していたことと違う事実が得られると,そこから新しい疑問がわき,研究が深まっていくのです。研究においては「自分の考え」で工夫を加えていくことが大変重要です。自分の考えを出発点とし,アイディアに富んだ研究を進めてほしいと思います。
 最後に,実験で得られた結果,その結果から考えた考察,さらに文献などを通して調べたことを,しっかり区別して書くように心がけてください。

【生物】 
 植物分野の優秀な作品では,実験方法やまとめ方に工夫がなされ,結果や考察がわかりやすく整理されていました。「自分のアイデアや発見を,みんなに伝えたい」という思いが伝わってきました。事前に図書やインターネットで調べ学習を行うことはもちろん重要ですが,それだけで終わらずに,実物に触れ,(何度か失敗しながらも)目的を達成する道のりを経験することがさらに大切です。周囲の人と意見を交換しながら,自分だけの実験や観察を組み立ててみましょう。
 動物分野では,全体によく考えて段取りをふんで行われてはいるものの,ねらいにあった実験計画や調査方法をよく検討するともっと良い研究になると思います。調査や実験の結果とそれに対する考察を混同した作品が多く見られました。結果の説明をした後で,そこからどういうことが考えられるのかを述べ,次のステップをも視野に入れてまとめ方を工夫してください。観察を主体にした作品では,観察記録だけにとどまるのではなく,環境条件の違いなどを設定した観察や実験を追加することで,深まった研究になると思います。

【地学】
 今年は,話題性を反映して,地震をテーマにした作品が多く目立ちました。特に,「液状化」現象を実験で確かめるというものが,多かったようです。また,冷夏をテーマに気象関係に取り組むものもありました。反面,ここ数年目立っていた環境的な視点からの観察・実験をする作品がほとんどなかったのが印象的でした。全体的に,中学生らしく,手順をわきまえて,きちんと研究をまとめていることは,すばらしいことだと思います。
 しかし残念だったのは,マニュアル本から実験のヒントを得て,そのまま利用して検証したりする作品が見られました。研究の方向付けとして,参考図書を利用するのは大変よいことですが,やはり自分なりの工夫はほしいものです。時間をもう少しかけてじっくり取り組めば,自分だけの良いアイディアも生まれてくるでしょう。がんばってください。
 さらに,ここ数年の特徴ですが,インターネットを利用して,データを入手する手法がでてきました。調べることは大切なことなので,良いと思いますが,その活用方法をしっかり自分のものにすることは忘れないでください。例えば,自分の実験・観察結果との比較や分析の方法を目的にあわせて工夫したりなどすることです。そのためにも,観察・実験は,研究の核として入れていくことが大切です。そして,必要によっては途中でも見直しながら,見通しを持って進めていくことも必要です。粘り強く追究していく姿勢を忘れないでください。
 来年も良い作品がたくさんでることを期待します。



■第2部 (生物・岩石・鉱物・化石などの標本類)

【動物標本】
 標本作成技術は高く良い作品が多い中,雑な仕上げの作品があった事は残念です。同一種を多数個体採集した標本も見られましたが,自然保護への配慮を行ってほしいと思います。地域やテーマを絞った上で,なるべく種類を増す努力をしていくようにすると良いでしょう。内容が第1部にふさわしいと思われる作品がありました。出品部門の検討や,タイトルと作品内容の統一性に気をつけ,標本作製意図を明確にできるように考えてください。

【植物標本】 
 時間をかけて標本作りに取り組んだ作品に,高い学術的価値を感じました。今後は,植物の分布や形態の比較,生育環境の差異に注目するなど,より発展的なテーマに挑戦して行くことが望まれます。一方,標本の作り方に不慣れな人は,採集を行う前に科学館や学校の先生から指導を受けるなどして,「科学的な記録を正確に残す」という標本づくり本来のねらいが達成できるように心がけて下さい。また,貴重な種や採集が禁止された地域に対する配慮も忘れることなく,植物と自然環境に愛情を持って調査に励んでいただきたいと思います。

−動植物の採集時の注意−
 国立公園や国定公園などでは,動植物の採集は行わなようにしましょう。その他の地域でもレッドデータブックに記載されている種には注意を払い,特に絶滅危惧種に指定されているものはむやみに採集しないようにしましょう。
 よくわからない時は,科学館や仙台市の環境管理課,宮城県の自然保護課などに事前に確認するようにしましょう。

【岩石・鉱物・化石標本】 
 これから標本づくりに挑戦しようという人のよい手本となる,標本製作の基本がしっかりできている作品が見られました。産地に足を何度も運んで採集し,ていねいにクリーニングした上で,ラベルや小箱作り・名前調べなどをしっかり行っていました。採集の目的をはっきりさせて採集から整理までを行い,産地の情報や採集した標本から考えられることなどをしっかりまとめている作品もありました。標本が仕上がった段階で終わりにするのではなく,これからはこのようなまとめかたまでが望まれると思います。自分自身の標本になるものですから,じっくり時間をかけて取り組んでほしいと思います。名前調べについては,図鑑などを使って自分で調べようとすることはとても良いことですが,科学館などを活用してより正確なものにしていく努力も必要だと思います。



■第3部 (創意・工夫のある科学工作)

 夏休みの期間を上手に使い,工夫された力作と思われるような良い作品が見られました。さらに,来年に向けて多くのアイディアを使った作品が出てくることを期待しています。
 ただ,残念だったのは全体を通じて,着眼や発想はよい所をとらえていても,実際に作ったものが動作しなかったり,または動作しにくかったりする作品が見られました。自分で動作を確認しながら,しっかり動くように工夫していくことが大切です。それには,事前に取り組む時間を見通しを持って,計画的に行うとよいと思います。
 さらに,一つ一つが小さくまとまってしまっている作品も見られました。もっと,夏休みだけに限らず,いろいろな体験をもとに発想を深めていくとよいと思います。
 また,マニュアル本やキットなどを利用して製作しているものも見られましたが,そのままではなく,やはり自分なりの工夫や発想を加えていくとより高度な作品が完成していくと思います。
 同じテーマで毎年出品し,改良を加えている作品もありましたが,今一歩伸び悩んでいる感じがしました。むしろ,思い切って新しいものに挑戦することも大切です。新しい科学工作の世界へチャレンジ精神で臨んでいくことを期待します。